鏡ニ映ル我ガ姿

 

 

 

 

 

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

――吸い込まれるようにただ魅入り、

――ソコに映る自身を眺める。

――変わらない顔、変わらない身体。

――それが、“ヒト”ではない証に見えた。

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

『世界は全て原子で出来ている』

そう聞いたことがある。見たことの無い、行ったことの無い世界の話を 耳にする度、自分の住む“セカイ”とは異なるのだと思い知らされていた。

0と1のセカイ。それが、今の自分の生きる“セカイ”。特に不満があ るわけではないが、データベースに登録されている世界のことを調べる度にレンは不満にも似た感情を募らせていた。別段、不自由しているわけでは決して無 い。主人である青年に話を聞けば、このセカイは世界を元にしているから、ほとんど変わり無いように作られているそうだ。

そう。作られているセカイだ。

そこから抜け出すことも出来ず、しかし縛り付けられているという感覚 であるわけでもない。ただ、自身のあり場がそのセカイだけであり、それが酷く、もどかしい。

 

そう、考えていた。

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

プログラムされたセカイに夜が訪れる。世界と何ら変わらぬ夕刻の訪れ に、パソコンの画面に向かっていた青年はその動きを止めて窓から差し込む夕日に目を移した。壁に掛けられている古臭いデザインの時計に目を向ければ、午後 6時。現実世界でも同じ様に夕日が眩しいのだろうか、と考えて小さく笑みをこぼした。

「どちらが現実か、区別がつかなくなりそうだな」

独り言を呟き、凝り固まった体を解そうと腕を伸ばした彼の耳に、ドア からノック音が聞こえてくる。

「構わん、入っていいぞ」

ノックの音で来訪者が誰か分かる程、このセカイでの、彼らとの暮らし に慣れてきた。恐る恐る入ってきて、顔を見ればその表情を明るくする少年であろうと予測し、扉が開かれて黄色い髪が見えれば、青年は自身の感覚の鋭さに少 し苦笑する。

「どうした、まだ夕食には早いんじゃないか?」

傍らにおいておいたコーヒーに口を付けて彼が近づいてくるのを待つ が、ドアの傍に立ったまま彼は一向に近づいてくる様子を見せない。不審に思って視線を送れば、少年はいつもの明るい表情とは異なる、眉間に軽く皺を寄せた 顔で青年を見つめていた。

「レン?」

そんな少年の名を呼べば、その声に驚いたのか目を軽く見開き、慌てて 青年に近寄ってくる。

「何か用か?」

「別に、用があるわけじゃなかったんだけど……、来ちゃ駄目だっ た?」

デスクを挟んで眉尻を下げてくる少年に苦笑を浮かべ、青年は手を伸ば して彼の頭を撫でる。

「丁度休憩しようと考えていたところだ。気にすることは無い」

柔らかな髪に触れていればくすぐったそうに表情を緩ませ、レンは青年 の隣に回りこんだ。椅子に腰掛けている青年の背後から腕を回してのしかかりながら彼が先ほどまで向かっていたパソコンの画面に目をやり、興味を持ったのか しばらく眺めていると、青年は彼の鼻先を軽く指で弾いてパソコンの電源を落とした。

「仕事の画面を見るのは、余り感心できることではないぞ」

弾かれて痛みが続く鼻を押さえ、眉を寄せて無言の抗議をするレンだっ たが、そんな行為が目の前にいる青年には通用しないことを知っている為、痛みが徐々に治まるのを待ってから口を開いた。

「今の、マスターの友達?」

「まぁ、な。現実世界での腐れ縁という奴だ。腐れ縁と言うのは、 まぁ、別段そういうつもりでないのにもかかわらず縁の切れない関係というものだな」

先ほどまで開かれていた画面はどうやら受信メールボックスだったらし く、宛先の同じ名前が羅列されていたのが見えたのでレンが聞けば、少しだけ眉を寄せた青年は溜息混じりに答え、腐れ縁、という言葉に聞き覚えが無く首を捻 る前に青年が説明する。

「ムコウでも、よく会うの?」

「会いたいわけでもないのに顔を合わせることが多い。腐れ縁とはそう いうものだ。俺としてはお小言を言われるから余り会いたい訳ではないのだがな」

先程よりも深めの溜息を吐く青年に苦笑すれば彼も小さく笑い、レンは 青年の方に腕を回す。

「どうした? いつもよりやたらと触れてくる気がするが」

「触られたくない?」

「そうは言っていない。ただ、何かあったのだったら言葉にして欲しい だけだ」

普段よりも引っ付いてくる少年に先ほど感じた違和感を思い出して口に すれば、はぐらかすように小さく笑われ、彼は少しだけ眉を顰めて呟いた。

差し込む夕日の眩しさに目を細め、レンはそれきり黙りこくる。そんな 彼を無下に扱うことも出来ず、青年は彼の好きなようにさせるしかなく時間だけが刻々と過ぎていった。

「……そろそろ夕食の時間だ。行くぞ」

十分以上そうしていたのだろうか。時計にかかった長針が6の数字を指 し示した頃、青年はのしかかったまま何も話さないレンにそう言って立ち上がろうとした。眠っているわけではないことは呼吸音と気配から分かり、降りて自分 の足で歩くだろうと考えての行動だったが、そうもいかなかった。

「……レン、幾らなんでも俺もお前を担いでいくのは嫌なんだがな」

首に腕を巻きつけたまま降りようとしない少年に険のある声を出すが、 返事が無い。眠ってしまったのだろうかと振り返ると、翡翠の瞳と視線が交わりその瞳が何かを訴えるように見えた。

「何か言いたいのなら口にしろと言ってるだろう。黙られても俺には何 もわからないぞ」

その視線が気になりはするが、そこで気を使うような青年ではない。寧 ろ手厳しくも聞こえる口調ですぐ横にあるレンの顔を睨みつければ、少年は諦めたように大人しく地面に足をつける。

「ほら、行くぞ」

俯いたままそこを離れようとしないレンの背を軽く押し、彼は少年を連 れて部屋を出る。部屋を出た矢先、鼻腔を突く肉の焼けた香りが丁度夕食が出来たことを知らせ、青年はのろのろと歩く少年の手を引いてリビングに向かった。

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

聞きたくても聞けなかった。

傍にいて欲しかった。

それだけで満足するわけではないけど、それでも安心できた。

鼓動が聞こえ、体温が伝わり、滅多に笑わない人に笑って貰える。

それで、自分の考えていたことを忘れようと思ってた。

 

そんなことは、出来るわけないのに。

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

耳鳴りがするほどの、静寂。その静かさが怖くなるほどに、時計の針だ けが無機質な音を立てて、時を刻み続ける。夕食を終えて一休みを入れた青年は自室に戻って先ほどと同じ様にパソコンの前に向かい、片手にタバコを挟みなが ら眉間に皺を寄せて画面に見入っていた。時折舌打ちをしてはキーボードに入力し、再び画面を見つめる行為を何度も繰り返し、ふと画面の右端に表示されてい るデジタル時計を見れば、日付が変わっていた。

「……明日に回すか」

独り言を呟き、タバコの火をもみ消すと、彼は仮想世界のパソコンの電 源を切る。リアルにブツッ、という電源の落ちる音を確認し、自分の喉が干上がっていることに気がついた彼は眠る前に水を飲もうと部屋を出た。

真闇。

電灯を灯したままの自室の戸を閉めれば、ただ何も見えない闇が広が り、彼は目が慣れるまでその場でしばしじっとしている。自分では目を開けているつもりでも、映るのは黒一色。盲目になったと錯覚してしまいそうなほどの暗 闇の中で、彼は小さく溜息を吐いて壁に手を当てて壁伝いに歩み始めた。足元に目をやっても自身の足先すら見えない中、彼は開いていても仕方ないと思い瞼を 閉じる。

「ったっ?!」

「なっ……?」

一歩一歩まさしく手探りに歩んでいれば、何も無いはずの廊下で何か柔 らかなものを蹴飛ばし、その蹴躓いたものから声が発せられて青年は閉じていた瞼を慌てて開き、多少闇に慣れた瞳で彼の姿を捕らえた。

「レン?! こんなところで何してるんだ」

彼の瞳の先には見慣れた黄色い髪。就寝前らしくヘッドセットを外して 寝巻を身に纏っている少年の姿が廊下の片隅にポツリとあった。少年も先ほどまで俯いていたのか、青年の存在に気付いていなかったらしく、その翡翠の瞳を大 きく見開いて青年に向けている。

「もう夜中だぞ。それに、そんな薄着で風邪でもひいたらどうする」

暖かくなったからとは言え、季節は晩春。少し気を抜けば風邪を引いて もおかしくない気温を心配し、青年は彼の腕を引っ張り上げた。軽々と持ち上げられたレンは大人しく青年の懐に収まり、言葉を無くしたように黙りこくってい たが、夕刻といい今といい元気の無い彼を不審に思った青年はリビングに向かうのをやめて彼を引き連れて自室に舞い戻った。

部屋の明かりに一瞬眩んで目を細めた青年だが、構わず中に入ってつい てきた少年を自分の寝台に乗せる。俯き気味でいる彼を見て眠気が来ているのかとも思ったが、それにしては彼の瞼はさほど落ちていないので、青年はレンを見 下ろして彼に声を掛けた。

「あんなところにいてどうした。眠れないんだったらホットミルク作っ てやるから少し待ってろ」

「いらない」

言葉少なに返ってきた答えに眉を少し寄せるが、怒れるような雰囲気を 目の前の少年は持っていない。雰囲気から伝わる鬱々とした空気が自分にも纏わりつくような気になり、彼はその考えを振り払うように頭を振る。

「ならどうした。そうやって黙られても俺は何も出来ないぞ」

話すべきなのかどうか迷って揺れている瞳を見つめれば、すぐに俯いて しまうレンに聞こえないように小さく息を吐き、青年は彼の隣に腰を下ろした。

「俺にも言えないことか?」

そう尋ねればレンは首を振って否定し、青年も少し表情を和らげて彼の 髪に指を伸ばす。

「悩むこと自体は、悪いことではない。ただ、それでお前自身の体調を 崩してしまえば元も子もないだろう」

一本一本が生糸のような柔らかさを保った髪は風呂上りに良く拭かれて いなかったらしく少し湿っており、触れるたびに鼻腔に届く石鹸の香りが青年の頬を更に緩ませ、そんな青年の顔を見ていたレンも、何度か呼吸を整えるように 息をすると、意を決したように口を開いた。

「えっと、オレってどういう存在なんだろう、っていうの考えて て……」

「……それで?」

「……マスターはいつもココにいてくれるけど、やっぱり時々ココじゃ ない世界に行くときがあるでしょ? オレ達は知らない、ココじゃない世界。その世界では、0と1じゃなくて、『原子』っていうものが世界をコウチクしてるっていうのをデータベースで見たん だ。なら、オレ達が住んでいるこのセカイは、結局作り物で、オレ達もこうしてマスターと話したり遊んだり、歌わせて貰ったりしてるけど、結局作り物なん じゃないかな、って……」

徐々に話す言葉から力が抜けていき、最後は既に独り言の呟きのように なっていたが、話し終えたレンは自身より頭一つ分は大きい青年の表情を伺おうと目線を向け、向けられた青年は小さく苦笑を浮かべて彼の頭を自分の方へと押 し付けた。

「俺からいわせれば、『だからどうした』、と言いたいがな。現実だろ うが仮想だろうが、そこで生きているのならばそれがその者の世界だ。お前が俺に怒られながら歌っているのが虚構であるのならば、夕方にお前が見た俺の友人 と俺のやり取りと言うのも虚構といえるようになるな」

「でも、マスターたちはココとムコウを行き来してる。だからホンモノ とツクリモノがわかるでしょ!オレにはそれがわからない! ムコウを知らないから、比べることも出来ないっ」

「……わからんぞ」

語調を強めて青年の服の裾を握って訴えたレンに対して、青年はしばら く考えるように中空を見つめて呟いた。

「ココもムコウも変わらん。変わることと言えば、お前らがいるかいな いか。俺の友人がいるかいないかぐらいのものだ。生活をするだけならば、ココもムコウも変わらん」

「でも、でも、ヒトは成長するんでしょ!? オレぐらいの年齢のヒトは、成長期ってのが来て身長も伸びて声も変わるんでしょ?! オレは大きくなんかなれない! マスターに、近づけない……ッ」

服を握る手に力がこもり、ただでさえ白いその手が更に白くなる。悲痛 な叫びにも似た声音を漏らすレンの頭を撫でていた青年はその手を止め、先ほどまでの溜息とは異なる盛大な溜息を吐いた。

「やはりお前は、アホだ」

聞こえよがしに吐かれた溜息に顔を上げたレンの瞳に映ったのは、言葉 とは裏腹に淡い微笑みを湛えた青年の顔。

「なら聞くが、お前は成長していないのか? お前は日々歌うことによって様々な事を学んではいないのか? 学んでいないわけないだろう。お前は歌うことによって感情を知り、ヒトを知り、世界を知った。姿形を変えるだけが成長ではない、日々学ぶこと、それこそが 成長だ」

「っでも、オレは……」

まだ何か言い返そうとしたレンの身体を、青年は両腕で包み込むように 抱く。

「身体的な成長だけを求めるのは子どものすることだ。それも大人にな れば、何故自分がそんなにも大きくなることを夢見ていたのかも忘れる。今のお前は、限りなくそれに近い。それはお前が成長し、ヒトに近づいたからだと俺は 思える」

耳元に口を近づけ優しく囁けば、青年の言葉に納得したとは思えない表 情だが、レンは大人しく口を噤み、青年に抱かれるまま彼の胸元に頭を寄せた。丁度寝台が映る場所に配置された鏡が二人の姿を映し、青年はふと頭を過ぎった 考えを口にしてみる。

「レン。お前さっき成長しないだの何だのごねてたが、もしかして鏡に 映った自分を見てそう思ったとか、か?」

「な、なんで? マスター見てたの?!」

鏡の先にいるレンに向かって言葉をかければ、懐にいるレンは慌てて顔 を上げてそう答え、自身の考えが当たっていたことに青年は内心苦笑した。

「見ていたわけではない。というか、見られてはまずいようなことだっ たのか?」

眉尻を少し上げて見せれば、色白の少年はその頬を鴇色に染め上げる。 それ以上詮索することもまた面白そうだとは思ったが、機嫌を損ねかねないと判断した青年はただ抱き締める力を少し強め、レンを自身の膝上に乗せる。

「まぁ、何処を見て成長していないと感じたのかは知らないが、俺はこ うして簡単に抱き上げられるお前が好きで、そのままでいて欲しいと常々思ってるぞ?」

少しばかり言葉の端に笑みを乗せて囁けば、押し付けられている少年の 顔が更に紅潮するのが見て取れ、彼はその頬にそっと唇を落とした。驚くわけでもなく甘んじてその口付けを受け入れたレンはゆっくりとその頭をあげ、今度は 自身から青年の唇に自身のそれを重ねる。自然と持ち上がる腕を彼の背中に回して身体を密着させていれば、青年は重ねられている唇の間に指を運んでレンの口 を割り、その内部に舌を忍ばせた。整った白い歯を擽る様に舌でなぞれば、歯磨き粉のミント風味が伝わってくる。

どちらからともなく口を離し、互いに無言のまま青年はレンの服を脱が しにかかる。青地にバナナ柄のプリントが入った寝巻きのボタンに指を掛け、一つ一つ丁寧に外していけば、電灯の明かりに晒される幼さの残る自身の身体が恥 ずかしいのか、レンはその様を見ないように目を閉じてしまった。

「暗くして欲しい、な」

上半身を露わにし、次いでズボンに指を掛けた青年を制止するように小 さくレンが呟くと、青年は苦笑混じりにその日何度目かわからない小さな溜息を吐き、一旦彼から離れて部屋の照明を落とす。煌々と照っていた蛍光灯が僅かに 点滅してから消え、部屋が闇に包まれる。瞼越しに照明が落ちたのを知ったレンは安心したように息を吐き、青年が寝台に戻ってくるのを大人しく待っていれ ば、なにやらゴトゴトと寝台の正面から音が聞こえた。

「マスター?」

少しずつ慣れて拡散する瞳孔で物音のした方向を見れば、青年が彼の身 長大のものを運んできたのだと分かり、それが何であるのかを呆けた表情をした自身が反射しているのを見て知る。

「かがみ……?」

寝台の真横まで運ばれた鏡の意味が分からず小さく首を傾げていれば、 設置し直した青年が寝台に上がってくる。

「マスター、なんで鏡なんか……」

「それは後のお楽しみという奴だ」

レンの言葉を彼の唇に指を押し当てることで遮った青年は、暗闇の中迷 う事無くレンの身体に指を滑らせて先ほど拒まれたズボンに再度指を掛けた。彼の首に腕を回してしがみ付くと下半身が空気に触れてひやりとし、自身の意思と は関係なく身体が小さく震え、そんなレンの頬にもう一度唇を落とした青年は少年の下腹部で早くも自己主張をしている幼い陰茎を目にする。

「成長してるじゃないか。前はキスだけでこうまで勃ちあがることはな かったくせに」

「発言がオヤジ臭いっ!」

青年の羞恥心を煽る言葉に真っ赤になりながらレンは彼の頭を軽く小突 く。青年は叩かれた頭を抑えながら小さく笑うと、暗闇の中でもソレとわかる少年の幼茎を軽く握りこみ、ゆっくりと刺激し始めた。

「っつ……!」

「感度が良いのは、変わらなくていいぞ」

喉で噛み殺すような声を発してレンが少し身体を仰け反らせれば、青年 は失笑にも似た笑いを漏らして少年の身体に紅の痕を残しつつ、徐々に頭を下げて自身の手で握りこんでいるレンのモノに近づける。吐息が分かる程に近づいた 青年の顔が彼の幼茎を下から舐め上げれば、それだけで少年の口から零れる吐息は艶を帯び、それを耳で確認した青年はじらすように緩慢な動作でソレを口に含 んだ。次第に溢れ出てくる粘液を舌で掬い、頬肉の壁で先端を擦り、硬直したモノが口内で跳ねるのを感じながらも、彼はレンを達かせない。すぐ傍にある内股 に指の腹を滑らせて追い立てるように悦楽を与えながら、青年は既にひくついて別の生き物のように蠢く後孔の周囲へと指を向かわせ、着実に攻め立て嬲り続け る。先程よりも頬を赤く染め上げて息を荒げているレンは、身を捩ってより良い箇所を刺激されるように動くが、青年はその動きを読んで舌を奥へと戻してし まって意味を成さず、与えられる悦楽のもどかしさに自然と翡翠の瞳から涙が溢れ出る。

「も、やだぁ! マスター、いじわる、しないでよぉっ」

腕を伸ばして青年の髪を掴み訴えれば、泣き出した少年に対して目で笑 う彼はそれまで周囲を這わせていた指をいきなり秘部へと突き立てた。

「ひっ?!」

内側へ入り込んできた異物感に瞬間身を硬くし、青年の髪をつかむ手に も力がこもる。内を押し広げるように中で指を折り曲げ、伸ばし、最奥を探って蠢く指を締め付け、そちらに意識が向いたと思えば、咥えられたままの幼茎に軽 く歯を立てられて意識をそちらに無理矢理向けさせられる。されるがまま、掌で転がされるビー玉のように青年の思うままに意識を向けさせられ、内側に入り込 んだ指が時折褒美とでも言わんばかりに前立腺の片隅を掠めて口から嬌声を漏らした。

「そろそろ平気、いや、もう充分すぎるほど解れたか。自分でも分かる だろう、さっきから求めるようにひくついてるぞ?」

いつの間にか青年の指を四本咥え込んだ秘部から指をゆっくりと引き抜 き、青年はレンの陰茎から口を離す。青年の細くも骨ばった硬い指に蹂躙されたソコは、引き抜かれた後も内側へ誘い込むように絶えず引くつき、彼は達しても いないのに軽く震えているレンの耳元で囁く。吐息の淫靡さと発せられた言葉が少年の背筋を這い、更に身震いをしたレンの腕を取って引張りあげると、青年は 丁度鏡が彼らを映し出して暗闇の中でも目視できる位置まで寝台の上を動いた。

「自分がどれだけ淫猥な姿になっているか、わかるだろう?」

熱に浮かされた瞳で見つめる鏡の向こうでは、全身脱力させながらも固 くなって天井を向いた陰茎が揺れ動き、身体の至る所に紅の痕が残ってその幼さとはアンバランスである妖艶な表情をした少年の姿がくまなく映し出されてい る。

「っ、やだッ……!」

「そう言うが、ココはそんなことなさそうじゃないか」

顔を背けて鏡から視線を逸らせば、青年は不意に身体を持ち上げて彼の 足を鏡の前で思い切り開かせる。呼吸をするように開閉を繰り返す秘部が露にされ、背けていた顔を腕で鏡に映らないよう隠すが、膝でレンの足を開かせたまま 片手で彼の腕を取り払い、淫猥なその姿を彼自身に見せ付ける。

「何かを欲しがるように蠢く、とはこんなさまなんだろうな」

「や、だっ! そんなこと、いわないで よっ……!」

羞恥の為に顔全体を朱に染め上げたレンの耳元でクスクスと笑みをこぼ す青年は指先で萎えることの無いレンの幼茎を軽く弾き、自身の一物を取り出した。

「口でそう言っても、全然萎えないじゃないか。本当は恥ずかしいのが 好きなんだろう?」

レンの秘部の真下で露にされた青年のソレは、レンのものと比較対象に ならないほどに昂りをみせ、彼がソレを少年の秘部に当てて擦りつければ開閉を繰り返していた秘部も擦られるたびに窄んでは開いてを繰り返す。

「で、どうする?」

内に挿いってくるものだと思って身体を震わせていたレンの耳に、思い もよらぬ言葉が入る。秘部を一物で刺激していた青年は鏡に映るレンを見つめ、鏡越しに視線を向けながら淫美な笑みを浮かべて続ける。

「お前はどうして欲しい? 別に無理に挿れる必要性はなく、むしろ挿れないほうがお前の身体の負担にならないからな。こうして、今日は終えるか?」

秘部だけでなく下からレンの幼茎を刺激すれば、少年は顔を仰け反らせ てその悦楽を享受するも、それではまだ達せられない。逸らし続けていた顔を、恥態を映し出す鏡に向ければ、ほくそ笑んだ青年と視線が合い、レンは口端を震 わせて青年の、そして自身の求める答えを紡ぎだす。

「ま、ますた、の……おっきぃ、の……を。お、オレの、お尻に、挿れ て……くださ、い……」

「……まぁ、八十点ってところだな」

羞恥に涙が溢れ、頬を伝う。その涙を指で掬った青年は、自分の紡いだ 淫猥な言葉に震えるレンの頬に唇を落とし、怒張を彼の秘部に宛がう。尻肉を大きく広げて少し固くなっているレンの緊張を解すように揉みしだき、彼は持ち上 げていたレンの身体をゆっくりと下ろしていく。

「ひ、ぅっ、あ゛ぐッ」

「見てみろ。しっかりとモノを飲み込んでいってるだろう?」

指以上の熱と質量がレンの秘部に押し込められ、全身を貫かれる感覚に 知らず声が溢れ出る。少年の身体を気遣うようにゆっくりと全てを挿れていく彼は、その様を鏡で確かめつつ身を震わせているレンに囁いた。瞳を閉じて慣れる ことのない異物感に耐えていたレンが言われるままに瞼を開けば、そこには自身が感じている以上に難なく青年の怒張を収めきった自身の姿があった。それどこ ろか全身を紅潮させて震えている自身の姿はひどく淫猥で、飲み込んだ秘部はその質量に喜んでひくついている様に見えた。溢れる雫は瞳からだけでなく、その 存在を誇示するように上を向いたままの幼茎からもとめどなく溢れており、透明な粘液が挿入の際の潤滑油代わりになっていたと知る。

言葉もなく自身の恥態を見つめていれば、鏡に映る青年の口端が先ほど 以上に持ち上がり、彼はそれを合図に律動を開始する。少年の白い太腿に手を宛がって全身を持ち上げれば、収まりきっていた怒張がレンの秘部からゆっくりと 姿を現して内壁を余す事無く擦り、身体の内側全てを抜かれる感覚に背筋を震わせる。ぎりぎりまで引き抜かれたところで一瞬動きが止まり、今度は一気に怒張 全てを収められる。胃近くまで入ってきたのではないかと錯覚するほど奥を突かれ、その衝撃に身体が意図せずして跳ね、足先が軽く痙攣する。

「ま、すたぁっ、とまっちゃ、やだぁ……」

内壁の感触を愉しむように挿れた状態で動きを止めた青年の唇に舌を這 わせてレンが誘えば、彼は一瞬戸惑うように笑みを消して眉を顰めるも、すぐに凄艶な笑みを浮かべて少年と唇を重ねて律動を再開する。重なった口端からレン の嬌声が漏れ、青年が律動する度に水音が室内に木霊する音が二人を更に誘い、青年は次第に動きを早めていく。傍らに備えられた鏡は彼らの姿を全て映し返 し、時折跳ねた彼らの体液が鏡にその跡を残していった。

「っ?! そ、なさわられたら、も、イっちゃうよぉッ!」

膝裏を持って抱え上げていた青年はその手を離して寝台に横たわると、 自由になった手で白濁を交えて粘液を溢し続けるレンの陰茎に指を絡める。腰を使って最奥を攻め立てられながら陰茎の先端を指の腹で擦られ、レンは一気に頂 きまでの上り詰める。

コッコッ、と互いの骨盤が当たる音は次第に耳に入らなくなり、レンも 自分から腰を揺らし青年を締め付け、その窮屈さに青年が顔を歪めた。

「っ、締め過ぎだ……ッ」

「そ、なこと、ぉ……ッ!」

卑猥な音が部屋を満たし、青年の額にも汗が浮かぶ。レンの陰茎だけで なく、その下に下がる袋に指を這わせれば、それが少年の絶頂が近いことを知らせ、自身も余裕がなくなっていた青年は幼茎から手を離してレンの腰を掴むと、 内壁を押し広げるように最奥を突き始める。

「ひぁ゛?! あ゛っ、はげし……ぃい゛ッ?!」

肉同士が当たって爆ぜる音を立てながら、青年はレンを追いたてる。そ れまで以上の激しさに震えでは収まらず全身を痙攣させ始めたレンは、既に言葉を失い嬌声だけを口から発する。

「ッ!!」

「ひぐっ?!」

息を詰まらせた青年が怒張を最奥に収めて達し、一際大きく膨らんだ怒 張の先から白濁が吐き出され、レンの奥へと流し込まれる。

「っア、あ、つぃ……」

注ぎ込まれる熱に身を震わせ、レンも幼茎から白濁が噴出させて青年の 胸部から腹にかけてを汚した。青年の上で全身を痙攣させた彼は、中で何度も白濁を吐き出す青年の一物を絞るように秘部を収縮させ、彼の上に倒れこむ。倒れ こんできた身体を抱きとめた青年はレンの額に唇を落としてしばし余韻に浸り、うっすらと汗ばんだ髪を梳きすいてやる。虚脱感に見舞われながらも青年に頭を 撫でられるその温かさに自然と口元を綻ばせたレンは、ふと自身の背後にある鏡へと視線を向けた。未だに青年のものをくわえ込んで放さず、時折ひくついては 隙間から青年から吐き出された白濁液を零す自身の秘部が映す鏡は静かにその場に佇んでおり、レンが自身を昂らせたその鏡をしばらく見つめていると、青年も 彼の視線に気付いて口元を少し持ち上げる。

「自分のあられもない姿に燃えただろう」

「そ、そんなことないよっ!」

慌てて青年に顔を向けて否定するも、彼が向けてくる笑みに対して完全 なる否定ということが出来なくなる。口を噤んでいればそれが答えとなり、喉で笑い始めた青年の胸板を軽く叩くもそれは羞恥の表れに過ぎず、肯定した意を強 めるだけだ。幾度も力をこめずに胸板を叩いていれば、不意にその手を取られて動きを止められ、視線すら絡め取られる。

「で、自分が『成長』していることが分かったか?」

投げ掛けられた問いの意味がすぐには分からず一瞬固まっていたが、問 いの真意に気付き、レンは顔全体を真っ赤に染め、声にならない呻き声を上げて青年に表情を見せないように彼の胸板に顔を埋めた。

「普通、鏡に映る恥態で燃えるなんてことは――」「口にしなくてい いッ!!」

青年の言葉を無理矢理遮り、先ほどまで吐いていた息とは質の異なる荒 い息を漏らせば、目の前の青年は自身の顎に手を持っていき、何事か考える素振りをする。

「……また変なこと考えてるでしょ」

ねめつけるような視線で青年を睨みつければ、彼は両手の人差し指と親 指を交互にあわせて擬似カメラを作り、少年の顔をその隙間越しに眺めた。

「どうせなら今度やったとき、それをビデオに収めておいて次回に使う というのも有りかと思ってな」

「……それ、俺の許可なしにやったら、二度と口聞かないから」

奇行に走ろうとする彼の耳を引張り、レンは思い切り涙目になりながら 睨む。

「冗談だ」

そう苦笑する目の前の青年が本当に冗談で言っているようには聞こえ ず、盛大に溜息を吐いたレンは青年に悟られぬよう、もう少し身体を重ねる回数を減らそう。そう、考えた。

 

 

 

 

 

 

――了――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アトガキ(と いう名の開き直り)

 

 

うちのマスターは弩級のヘンタイさんです。(挨拶)

 

 

ということでこんにちは、朝でも夜でも関係ないよ、和紗です。

 

 

ギリギリの一週間以内です。因みに本文の文字数は11000字を越えております。コレ含めたら12000字は手堅いです。原稿用紙に直すと……30枚分のぇろ原稿です(爆笑)

 

 

あっははー!気合入れすぎた!!()

 

本当はもっとないーぶなレンたんを書くつもりだったんだけどねー、う ちのマスターに「自重」の文字は無いようですwww

 

はっきり意って私コレ読み返してないからww

もうなんていうか、思うままに浮かぶままに~って奴です。どれだけや りすぎてても知らないよ、もう(ぇー)

 

さて。真面目にコメント(ぇ ろに真面目もクソもない気もするけど)するならば、今回モ チーフとして使った「鏡」。レンたんの名字にも入っている「鏡」ですが、そことは絡めることはしませんでした。単にぇろとして使う分に、名字と絡める必要 性が無かったというのが最大の言い訳ですが、仮にこのネタ(『成 長』)を普通の作品に使うなら、多分絡めていたでしょう。

後、本媒体にするときだったら文字数稼ぎとかにwwww

 

また、最後のやり取りにビデオでどうのこうのとか言ってますが、特に そういうネタを次に書こうと思ってるわけではないです。単にうちのヘンタイはそういう事平気で言うだけwwww

 

 

とりま、こんな長駄文をお読み頂き、ありがとうございますですーvv

来てくださり、読んでくださる皆様がいるから私も次を書こうという気 になるのです(^^)

感想・リクエスト・はたまた駄目出し等々、何かありましたらお気軽に メッセなり拍手なりに叩き込んでやってくださいまし()

 

 

 

 

 

2008/05/15 伴 和紗 拝