宴
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――暗い。
まず初めに感じたのは、自身の視
界を塞ぐ布の存在だ。次第に明確になっていく意識の中で、自分は何者かに捕まったのだと犬上小太郎は気付いた。手足を動かそうともがいてみるも、縄か何か
で縛られて吊るされているらしく、年齢にそぐわない骨ばった手が空を掻くだけだった。
捕まる、という状況に慣れている
わけではないが、小太郎は落ち着いた様子で辺りの気配を探りつつ、自身の置かれている状況を整理する。
(いきなり当身食らって、そっか
ら完全に落ちとって……。車とかの音が聞こえへんから、どっかの郊外か地下室みたいなとこか?)
カツン、と硬質な床を歩む足音が
耳に入る。常人よりも鋭い聴覚を持つ小太郎は、その足音から歩いているものの靴が所謂革靴の類のもので、男だろうと推測した。革靴の男で、恨まれるような
ことをした相手がいたかどうか記憶を探ってみるものの、貰った当身の所為かどうも上手く思考が働かない。
「目は覚めてるんだろ?」
関西地方独特の訛りが見られない
声。小太郎の前で止まった足音の主の声らしい。口元は塞がれていないので、小太郎は口角を軽く吊り上げて声の主を挑発するように鼻で笑ってみせた。
「何や、聞き覚えの無い声や
なぁ。ちゅーか俺、東の奴に知り合いなんておらへんはずやけど?」
目隠しをされ、四肢を拘束されて
いる彼の言葉が強がりであることは明白であり、男は彼の言葉には答えず手を伸ばして彼の顎を取った。
「確かに、君と私は知り合いでは
ない。だが、君が昔受けた仕事で不利になった者からの依頼で拘束した者だ、と言えばわかるのではないかな?」
「ま、そんなとこっちゅうのは誰
でも考えるわな」
強気な口調を崩さない小太郎に落
胆の色は見られず、男は彼の顎を掴む手に少し力を込める。
「君は置かれている状況が理解で
きないほど馬鹿な子には見えないんだが、勘違いだったか?
それとも、拘束されたこの状況を打開できると思っているのかい?」
「俺も一応裏社会で生きとる身や
で? その俺を簡単に拘束するっちゅうことは、あんさん相当の手練やろ?」
道を歩いていただけだったのに、
すれ違った瞬間に当身を貰っていた。誰に貰ったのかすらわからず、薄れゆく意識の中で垣間見たのは自身よりも高い身長の男だったはずだ。
「それで、どないすんねん。俺の
こと殺すんか?」
犬歯をむき出しに敵意を露にした
小太郎に、男は溜息を吐く。そして顎から手を離し、小気味良い音を立てて彼の頬を弾いた。
「依頼人からの要望がそうだったのならばそ
うせざるを得ないが、依頼人からは『懲らしめておけ』としか言われていない。だから、このように拘束をしているだけだ。十数年しか生きていないくせに無駄
な強がりは止すんだな」
今のは忠告だ、と男は付け加え、
叩いて赤くなった彼の頬を軽く撫でた。
「君ぐらいの弟を持つ身としては
忍びないが、これも依頼なんでな。それと、君もこの状況は一種の社会勉強だと認識してくれ」
声と共に男が指を弾くと、吊るさ
れていた体が無理矢理地面から離され、宙に浮かせられる。四肢で自身の体重を支えることになり、少し辛そうに身を捩るも、腕に絡んでいたものが蠢きだした
のを感じて小太郎は塞がれた視界であることも忘れて自身の腕を仰ぎ見る。
「なんや!?
縄が、動いとる?!」
「縄、か。確かに拘束具としてソ
レを思い浮かべるのは間違いではないかな」
腕に絡んでいたソレは縄や手錠な
どと異なり、彼の皮膚を滑るように動いていた。蠢き始めてからソレから滲み出てきたのだろう、生暖かい液体が彼の腕を伝い、鎖骨の窪みに溜まり始める。粘
着質なその液体は小太郎の身体に纏わり付くように流れ、服に染み込むと彼の身体に張り付いて気色悪さを助長させる。
「なんや、あんた……、俺に何し
ようとしとるんや?!」
服が張り付いた箇所が上半身だけ
でなく下半身にまで至ろうという頃に小太郎は歯を噛み締めながら眼前にいるであろう男に向かって叫んだ。虚しい抵抗だとは分かっていても、彼にとってはそ
う叫びたくなるほどの不快感なのだ。
「言っただろう?
社会勉強だと」
何処か動物めいた動きで体中に這
い始めた拘束物は次第に四肢だけでなく体全体に行き渡っていた。服が張り付いたことでソレが脈打っていることを知った小太郎は小さくその身を震わせ、ソレ
が自身の知らない異物であることを実感する。
「では、君の気が狂わないことを
祈っているよ。ソイツらは、手加減を知らないのでね」
「ちょ、待――グッ?!」
その場を去ろうとする男を引きと
めようと口を開いた瞬間、ソレが口の中に入り込んできた。喉奥近くまで冷たい液体で濡れた異物が口内を暴れ回り、呼吸すらもままならなくなる。どうにか鼻
で呼吸を確保して男の気配を探ってみるも、既に男の気配は足音と共に遠ざかっていた。
くぐもった声で男を引きとめよう
とするも全く気に止められず、男の足音は無情にも彼の耳からその音を失わせていき、歯噛みをしようにも異物に口内を犯されているためにそれすらも出来な
い。
足元を捉えていたソレが、徐々に
彼の陰部に近づいてくる。太腿の内側を這いずりながら近づいてくるその感覚は、気色悪さ以外の感覚を彼にもたらせた。
「んぅっ」
触感から得られる情報として、ソ
レは幾つも枝分かれをしており、太さが異なり、生物のように脈動しているのが分かった。空気に触れられている部分と、ソレに弄ばれている箇所との温度差に
小太郎は身震いをし、ソレは彼を面白がるように胸元や首筋、太腿の内側を重点的に舐めるように蠢いていく。
気色悪さの中に、彼の知らない感
覚が内側から浮かび出て、彼は鼻を通した弱い吐息を漏らした。そして彼は気付く。
自身の陰部が、首をもたげ始めて
いるのを。
訳が分からず、それでも羞恥心に
駆られて頬を染めると、口内を犯していたソレがズルリと音を立てて口を開放し、肺一杯に新鮮な空気を取り込みながら彼は口内に残った異物感を唾液と共に飲
み込んだ。小さく息を繰り返していると、ソレは不意を付くように彼が息を吐き出した瞬間に再び口の中に入ってくる。息苦しさに涙を滲ませると舌を絡め取ら
れ、弄ばれ、唐突に喉奥に入っていたソレの先端から溢れそうになるほどの生温かい液体が噴き出した。
「むぐぅっ」
吐き出そうにも口の中はソレで一
杯になっている為に吐き出せず、かといってそのままでは窒息しかねないので、小太郎は涙を溢しながらソレの吐き出した液体を飲み下す。喉に引っかかるほど
の粘着性を持ったその液体を飲み下し、再び開放された口で肩を上下させながら呼吸を繰り返していると、先ほどから感じていた得体の知れない感覚が鋭敏化し
ていくのを自身の身体の変化で理解した。
「な、なんなんや、ほんま
に……っ」
情けないほどの涙声に自身の唇を
噛み締めれば、胸元を弄っていたソレが左右対称に身体に備えられている突起物を摘み上げ、頭が痺れるほどの悦楽に小太郎は吐息を震わせる。
枝分かれしたソレは器用に彼の服
を脱がせると直接胸を這いずり回り始め、更に下腹部へと下りていき下着の中へと侵入していった。下着を押し上げていたその幼い陰茎に絡みつき、ぬめりを帯
びたソレの刺激に腰が砕けそうになった小太郎は、もう抵抗できなくなる。拳に力を込めようにもその意志を感じ取ったかのようなタイミングで幼茎を弄られて
思考がままならない。
気付けば彼の下半身も露にされ、
全裸の状態で目隠しと靴下だけが彼のまとう布になっていた。今その場には彼とソレしかいないとわかってはいても、隠すことの出来ない状態は彼の羞恥を煽
り、昂らせていく。そして、彼はそれまで服に納められていた尾を力無く垂らし、幼い陰茎に絡みついたソレは根本から筋を這っていたかと思えば、不意に陰嚢
を弄び予測不能な動きは菊門まで及んだ。
「そこは、ちゃうやろっ」
息を切らしながら拒否反応で力を
込めてみるも細いモノがあっけなく内へと侵入し、異物感に彼は肌を粟立たせた。
何が自分の体を這っているのか。
それすらもわからない小太郎は、恐怖心と共に与えられている悦楽に痺れ、半開きになった口からはだらしなく唾液が顎を伝っていた。
幼茎から溢れ始めた透明な液体が
潤滑油代わりになり、そこを這っていたソレの動きが更にすべらかになる。そして、固く窄められていたはずの菊門に侵入していたソレが一箇所を掠めた瞬間、
無意識で鼻を通した嬌声が上がった。
「ふ、んんっ」
脱力して緩んだ瞬間に内壁を弄る
ソレの本数が増やされ、圧迫感に身を固くするが、掠められた箇所を押すように刺激されて小太郎は吊るされた状態で完全に力を抜く。
循環する血液の鼓動が自分でも分
かる程の静けさの中、肌を這いずるソレの音と、自身の陰茎から聞こえる濡れた音と刺激がとうとう昂りを頂点まで運ぶ。
「ひ、出……るッ!!」
知らない感覚が太腿の辺りから広
がり、陰茎に集約されたの思った瞬間、小水とは異なる熱い飛沫が自分の腹にかかった。さっきまで以上の脱力感に見舞われ荒く呼吸を繰り返していれば、腹部
にかかったその飛沫を掬われて口に押し込められる。苦味と青臭さが口の中に広がるが、火照る身体が本能的にその得体の知れない液体を飲み下させた。
内壁を擦るソレの本数は更に増
え、太さの異なるもんが三本入り込んでそれぞれが異なる箇所を擦り、異なる動きをし、通常ならありえない逆流を感じ、小太郎はあわ立つ肌を押さえることが
出来ずにいる。達したばかりのはずであるのに未だ幼茎は治まることを知らず、むしろ吐出したことにより更なる悦楽を身体は追い求めていた。
二、三度跳ねて陰茎に残った雫が
床に落ちると、不意に目隠しが取り外された。
「ッ!?」
押し当てられていた布が取り外さ
れた開放感に一度息を吐こうとしたが、それ以上に自身に纏わり付いているソレを目にして小太郎は言葉を失った。
ソレは、毒々しいまでに肉の色を
保った触手だった。否、触手の大元には一つ目をもった異形の姿があった。小太郎の目の前で一つ目を中心に、全方向から伸びる触手が彼の身体を這いずり回
り、視姦するようにその一つ目が彼のことを凝視していた。
「離せっ! 離せやッ!」
気色悪さに身を捩って抵抗を始め
ると、一つ目は人間のようにその目を細め、内壁を擦っていた触手の動きを強める。
「ひっ、ア!」
それまで以上に深部に入り込んで
きたのを感じ、自身の下腹部に視線を下ろせば、そこだけが風船のように膨らんでいた。内側から押されて異常な自身の身体を見て、小太郎は目を逸らして逃避
しようとするが、内を荒々しく犯し始めた肉の蔦と、見つめ続けてくる一つ目と視線が合ってしまい、気が狂いそうになる。
「こわれるっ!
こわれてまうっ!」
悲痛にも聞こえる嬌声を上げる
と、それまで内側から押してきていた触手が唐突に内側から抜け出た。抜け出る時にも悦楽を与えることを忘れずにソレは強く陰茎の裏側を刺激していくと、恐
怖のために小さくなり始めた幼茎が反応して頭を上げる。
「や、やめっ!
もうせんから! あんたらとは関わらんからっ!」
さっきまでの強気な彼は、もうそ
こにはいなかった。今いるのは得体の知れない生物に全身を犯され、その恐怖に震える幼い少年だった。目隠しと一緒に取られた帽子の中から現れた獣のような
耳を垂らし、恐怖に震えるその姿はすぐにでも壊れてしまいそうである。
「ひっ?!」
抜け出たうちの二本が、彼の穴を
広げるように両脇から尻たぶを押し上げる。そして、彼は見た。その菊門に照準を合わせるようにゆっくりと近づいてくる、身体を這いずり回っていたものより
も太い、人の拳ほどの大きさをしたソレを。
「やめっ! 入らん、はいらんて!!」
拒絶の言葉を繰り返しながら喚く
彼の言葉が聞き遂げられることは無い。床を這うずるずるとした音を聞かせられ、押し広げられたそこに、それまで入ってきていたものよりも熱を保ったソレが
触れる。
「や、――グ、ぁあッ!!」
それまでの比ではない。熱も質量
も同じものとは思えないものが内側に入り込んで蹂躙し始める。入り込んできた勢いで恐怖が頂点に達し、彼は縮こまった陰茎から黄金色をした小水を漏らし、
それが床に注がれる音が無闇に部屋に響いた。そして、小水を溢れさせているその陰茎に再び触手が絡みつき、鈴口を弄る。下腹部は妙に膨れ、圧迫感に違わな
い質量が収められていることを嫌が応にも視覚から知らされる。
「ひ、う、動かんでぇ!」
涙を零して懇願を繰り返すが、そ
れも聞き受けられない。内側の肉を一緒に引きずり出し、奥へと押し込まれる度に身体が痙攣するほどの衝撃を受け、陰茎を包んでいる包皮をずらされて空気の
冷たさに身体が跳ねる。
自分の身体が自分のものとは思え
ないその状況に小太郎の思考回路は完全に機能を果たさなくなった。舌を出して呼吸をする姿は妖艶で。突き動かされる度に跳ねるのは身体だけではなく、再び
頭を持ち上げて透明な液体を零す陰茎だ。
壊れた人形のようにガクガクと揺
さぶられる身体には内側を擦られるごとに脳髄を突く悦楽が与えられ、彼の恐怖心を取り去り始め、強張っていたはずの表情が悦楽を求めるそれに変貌していっ
た。
「で、っかいぃ! ひ、イィっ」
嬌声が部屋に響き、肉の擦れる音
が彼の耳を犯す。陰茎を弄っていた肉の蔦は、菊門から陰嚢の間を這いずり、陰嚢の中の睾丸を軽く締め付けた。胸元の乳首は見たことが無いぐらいに立ち上が
り、それを引張られ、捏ねられ、押しつぶされる。
一つ目が与えてくる刺激全てに翻
弄されて小太郎はただ喘ぎ、再び幼茎から精液を飛ばした。気絶しそうな強すぎる衝撃は後一歩の所で気絶を許さず、陰茎に絡みついた触手が中に残った白濁液
を搾り出すように動き、彼は淫らな吐息を漏らして全身をくまなく犯される。
「も、むりや、ぁ……っ。しん
で、まうっ……」
繰り返される終わりの見えない猥
らな行為に、小太郎はもうか細い声しか上げられなくなる。身体は自分の体液か一つ目の体液で漏らすなく所無く濡れ、部屋を照らす豆電球の光だけが照らし出
すその身体は、小太郎の言葉とは裏腹に、更なる悦楽を求めて幼茎を勃たせていた。
「もう出ぇへん、でぇへん
て……」
執拗なまでに繰り返される陰茎へ
の刺激に息を切らしながら言葉を漏らすが、それは単なる彼の独り言にしかならない。赤く色付いた亀頭を強すぎず弱すぎず、舐めるように這い回り、内壁は完
全に一つ目のものを受け入れて身体を震わせる度に収縮を繰り返す。
繰り返される律動が、唐突に速さ
を変える。それまでは彼の反応を愉しむかのようにゆっくりと繰り返されていた動きが、ぎりぎりまで引き抜かれてから最奥へと突きこまれるのは変わらないの
に、その速度が急激に速まった。
「ひ、ぐ、あ、アァッ!?」
文字通り壊されかねない動きで動
き始められ、小太郎はただ嬌声とも悲鳴とも取れる声をあげ、言葉を失う。小生意気そうと称される顔は涙と唾液、そして双方の体液で濡れ光り、無意味な声を
上げる為に開かれていた口は、再び数本のソレが入り込んで蹂躙され始めた。声も上げられず、動くこともままならず、ただ揺さぶられて朦朧とし始めた意識の
中で、小太郎は幼茎の昂りが頂点に近づいていることだけを認識する。
「ん、んう、ン、グッ――」
腹を一際大きく浮き上がらされ、
小太郎は水っぽく薄まった精を吐き出し、内にそれまで無かった新たな感覚を与えられる。内側で膨らんだと思った矢先、体内に熱い飛沫を吐き出され、内側が
更に満たされていく。何度も収縮して内壁を汚していったソレがゆっくりと抜け落ち、吐き出された液体が一緒に零れ落ちていくのを最後に、小太郎はとうとう
意識を失った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
瞼越しに眩い光を感じて、小太郎
は目を覚ました。はっきりとしない頭を振って無理矢理覚醒し、辺りを見回す。
そこは、最後に意識を失った場所
とは別の場所だった。訳が分からないまま注意深く辺りを見回せば、そこが自分も知っているとある神社の社の中だということが分かった。
「なんで、こんなとこに……」
呟いて、ふと社の出口に紙が落ち
ていることに気付く。節々が痛む身体を動かしてその紙を手に取り、それが彼宛の手紙であることに気付いた。
『名も知れぬ少年へ
君が受けた恥辱を考えれば、
懲らしめる、という依頼も上出来だったと認識している。これに懲りたのであれば、もう少し自身の命の大切さを考えて依頼をこなすよう』
小太郎は少ない言葉で書かれたそ
の手紙を二三度繰り返し読み、一息吐くと、それを思い切り左右に引き裂いた。そして、大きく息お吸い込んで自身の両頬を叩く。
「大きなお世話だっちゅーね
んっ! 何様のつもりやーッ!!」
誰もいない社の中で、彼は大きく
叫ぶ。そして、気力の限界だったのか大きく後ろに倒れこんだ。
「見ててみぃ……、そのうちぜっ
たいに、みかえしてやる……かんな……」
急激な眠気に誘われ、彼は再び眠
りにつく。
――屈辱は忘れない、恥辱は忘れ
る。
そう、胸に誓いを立てながら。
――了――